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by 1193ru
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この一瞬

入院中のベンダーさんに、今日も会いに行って来ました。
二週間前は、ベッドから立ち上がり馬鹿話をし、市民マラソンに一緒に出ようねと約束をしました。
一週間前は、ベッドの上であぐらをかきかき時々吐き気をもよおしながらも、「いやいや、こんなんなっちゃってまいったよぉ〜」と苦笑しながら、ちょっと渋い話をしました。
それからは、何度行ってもいつも眠っていて、会話することもなく日が過ぎて行きました。
そして今日、もう、身動きひとつできない状態で、Mさんは横たわっていました。
体中いろいろな管やら線がくっついていました。
空きっぱなしの口からは時折いびきが漏れ、自力で閉じることができなくなった眼には濡れタオルがかけられ、真っ白になった左手だけが空を掴むような形でベッドからにょきっと出ていました。
心電図というのでしょうか、心拍数から血圧やらがモニターに映し出されていました。
今日も声をかけずに帰ろうかと思いました。
同席の仲間が「帰ろう」を連発する中、思い切って声をかけました。
「Mさん、門間だよ。来たよ。苦しいんだね。痛いところはある?眠れる?・・・・眠れるのならゆっくり休むんだよ」
若干高めの血圧がすっと下がりました。
心拍数が穏やかになりました。
そして、唇がゆっくりゆっくり動きました。
でも、声は出ず。
一分もしないうちにまたいびきが・・・。
それでも、話し続けました。
「妹さんと連絡が取れたんだよ。○○さんがね、連絡が取れたって言ってたよ。よかったね。心配してたものね」
小さく、頼りなげになってしまった肩をさすりながら話していると、再び唇が動きました。
気のせいかちょっと表情も変わったように思いました。
私の思いがけない言葉に驚いた・・・・そんな表情に感じました。
気のせいでしょうか。
しばらく声がけをして
「また来るね!」
と言い、病室を出ました。

仲間と別れて地下鉄に乗り、座席に深く腰を下ろしたら、泣けてきました。
あっと言う間に、みるみる衰弱してしまったMさん。
何がなんだかわからないうちに、Mさんが弱って行く様を理解できず、受け止められず、呆然としている自分。
Mさんはきっともっと話したいことがあったろうに、話し尽くすこともせずにこんな状況になってしまっている。
状況を飲み込めず、悔し涙が出ました。

夜、ハーティの八幡さんと話しました。
八幡さんは看護士経験があり、いろいろ教えてくれました。
「体を触りながら話しかけてみて。聴覚は最後まで残るんだよ。女性の声は、母親だとか妻だとか姉妹だとかを思い起こさせるから、安心につながるんだよ」と。
今までは眠りの妨げになると思い声がけをしませんでした。
でも、これからはもっと積極的に話そう、声がけをしようと思います。

これからはもっともっと一瞬が大切になります。
できるだけMさんとの時間を作ろうと思います。
by 1193ru | 2006-02-17 01:00 | ビッグイシュー