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by 1193ru
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頭上の積乱雲

ウミヘビショックから立ち直ろうと、浜を離れてガヒ島の散策に出かけました。
パイナップルに似た実をつけた木が生い茂るガヒ島の森。ここには野生のヤギが生息しているとのことでしたが、残念ながら会えませんでした。
森を過ぎると、また浜が。先ほど潜っていた浜とは異なり、岩がゴツゴツとしていて、たくさんのガラスの破片やプラゴミが打ち上げられていました。
ガヒ島は、ウミガメが産卵する島です。
プラゴミを見つめながら、産卵には環境が厳しいところだと思いました。

そうこうしているうちに、だんだんと空が暗くなってきました。
元いた浜に急いで戻ると、浜の監視員さんが「座間味に戻る船を出します。乗船希望の方は準備をしてください!」と大声で言っています。
どうやらスコールが来るようです。
荷物をまとめていると、ゴロゴロと雷が鳴り出し、雨粒がどんどん大きくなって来ました。
沖合に停泊しているクルーザーまでは、小型モーターボートで移動します。
最初のモーターボートに乗せていただきクルーザーに乗り込んだ途端、大雨になりました。
浜にはまだ30人くらいの方がいます。
ある一団は、森に入って行きました。
別の一団は、ビーチパラソルをいくつも集めそこにうずくまっています。
ほかの一団は、先ほど乗って来たモーターボートに今まさに乗り込み、大雨の中クルーザーを目指しています。
海面がこれまでの美しいブルーではなくなりました。
あっという間に、毛羽立った荒い目の布地のように変化しました。
ほんの数分で、辺りは一変し別世界に。
第二陣のモーターボートが、変化した暗い海面で心細そうに行き先が定まらないかのようにくるくる回っています。
スローモーションのような動きをするモーターボートとは反対に、激しいスピードで矢のように雨が海面に突き刺さっていきます。
ようやく第二陣のモーターボートがクルーザーに辿り着きました。
激しい雷と風、そして雨に、乗客は寒さと不安に震え始めていた時、船員さん2人の様子がおかしいことに気がつきました。
泡を食ったような表情で大声を上げ、船内を走り回っています。
乗客が全員揃ったにも関わらず、相変わらずクルーザーは停泊したまま。
雷が激しく鳴り、豪雨の中クルーザーはだんだんと揺れが激しくなっていきました。
そう、コレが「木の葉のよう」と言われる状態。初めて体験しました。
船員さんの叫び声が聞こえます。

「船首に集まってください!」

天井も壁もない船の前へ?
この豪雨の中を?

はじめ乗客たちは、船員さんの言葉が理解できずにそのまま客室にいました。
すると、船員さんがすごい形相で「早く!早く!」と追い立てます。
その切羽詰まった様子に、ただ事ではないと察知するやいなや、乗客たちは我れ先にと船首に向かいました。
豪雨が吹き付ける中、つかまるところもほとんどない船首で、唇を紫にしてガタガタと震えながら固まる一団。
私は先ほどウミヘビに遭遇したせいか、不安や恐怖に対して鈍感になっていたのかもしれません。こんな状況にも関わらず「なんとかなるさぁ〜、大丈夫さぁ〜」なんて思っていたのでした。

後からわかったのですが、あまりの豪雨と強風で海の中が荒れて碇が大きな岩か珊瑚に巻き付いてしまい引き上げることができなくなってしまっていたそうです。
このような状態でエンジンを全開すれば、船はバランスを崩してしまい転覆しかねません。それで、船首に人集めバランスを取ろうとしたとのことでした。

ようやく碇を上げることができ、座間味の港についた時は、雨はすっかり小降りになっていました。
時間にすればほんの数十分でしたが、何時間にも思えるような体験でした。
集中的な豪雨、強風、雷は、大きな積乱雲がもたらしたもの。
船が丁度積乱雲の真下にあったため、自然の驚異にさらされてしまったのでした。

この道30年以上という船員さんたちも、こんな体験はしたことがないと言っていました。
全員無事だったから言えることですが、とても貴重な経験でした。
(「貴重」と言っても、もう二度と体験したくないけどね)
自然の力が不意に見せた恐ろしさは、とても強烈なものでした。
by 1193ru | 2008-08-10 21:14 | モロモロ