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by 1193ru
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痛みを感じる想像力を

河北新報4月25日朝刊に掲載させていただきましたエッセーです。
よろしければご覧ください。
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痛みを感じる想像力を

 「世界の人々は虐殺の映像を観て『怖いね』と言うだけ。またディナーを続ける」
 「ホテル・ルワンダ」を観ました。この映画は1994年にアフリカのルワンダで起きた大虐殺の中、1200人の命を救った実在のホテルマン、ポール・ルセサバギナのことを描いています。
 私は、虐殺現場の映像を世界配信したカメラマンの冒頭のセリフが、今も脳裏に焼きついて離れません。
 二年前、私は友人たちと、イラクをはじめとする世界の紛争地の写真展を仙台で開催しました。紛争地に想いを馳せ、そこに生きる人たちを想像することで、一人ひとりの命の大切さについて考えたいと思ったからです。
 しかし、あれから二年。新聞やテレビ、インターネットを通して世界中の悲惨な事件を目にしながらも、いつの間にか想像力が薄れてしまっていたのでしょう。冒頭のセリフに、自分の姿を見たような気がしました。
 死体が転がり情報が錯綜する中、主人公のポール、ホテル経営者ティレン、国連平和維持軍オリバー大佐らが、逃げまどう人々を我が家族のように守り抜こうとします。
 市民活動の基本も正にそうです。当事者の方々の痛みを我がことのように感じるからこそ湧き出るやむにやまれぬ思い。それが、問題の解決へ向かう原動力となっていきます。相談員として、NPO活動者として、身近に起きる殺人や虐待、DV、引きこもり、ホームレスの問題を自分に引き寄せ、想像する力の必要性を常々感じています。
 当初この映画は、日本での公開予定はありませんでした。しかし、二十代を中心に上映を望む声が高まり署名活動に発展。わずか3ヶ月で4000人の署名が集まり、急遽公開が決定します。
 ラストシーンは決してハッピーエンドではありません。しかし、生き延びた人たちの安堵の顔の向こうに、この映画を上映させた人たちの行動力が重なり、私を勇気づけるのです。私は、体の奥から沸々と湧き出るものを感じながら映画館を後にしました。
by 1193ru | 2006-05-01 08:17 | モロモロ