ご覧いただきまして、ありがとうございます。


by 1193ru
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

からっぽの「かなしい」

鏡の前で、両の口角をそれぞれ人差し指で上げて、ちょっと歯を見せる。
鏡の中の自分が笑ってる。
笑えるんだ。
頭も心も体も、みんなみんな大声で泣いているのに。

笑顔だけじゃない。
お茶だって、ごはんだって、食べられてしまうのだ。
人に会えば挨拶もし、たわいもない話をし、
仕事だってしている。

大切な仲間を亡くしたというのに、
私は、
生活している。
変わりなく。

変わりなく・・・いや、ちょっとハイスピードで。
スピードを緩めると、
ほらね、
すぐに涙が出て止まらなくなる。
蛇口をひねったように、
止まらない。
ジャー、ジャーと流れていく。
このまま全部流してくれたらいいのに、
逆に体の中に「かなしい」や「さびしい」がいっぱいたまってくる。

夜が更けて、「一人」が「独り」になる時間が来ると、もう、よくわからなくなる。
「かなしい」も「さびしい」も「くやしい」も次から次ぎへと蘇る記憶とグチャグチャに混じっていく。

今晩は雨だ。
みんなで一緒に訪れた県北の田んぼを想う。
綺麗に刈り取られた稲が、今頃は田んぼに干されているはず。
この雨で乾燥が遅れることだろう。
6月の梅雨の終わり、青々とした田んぼが爽やかだった晴れた日曜日を思い出す。
ほんの数ヶ月前は、あんなに元気だったのに。

何がホントなのか信じられなくなって、葬祭会館へ行ってみた。
ホントがそこにあった。
ホントは、プラスチック製の看板そのままに、冷たく、違和感いっぱいにそこに立っていた。
看板の表も裏も舐めるように眺め回し、それでもやっぱりホントが信じられなくて、
人は信じられないとこうも涙が出るものなのかと、おかしな納得をして帰ってきた。

表皮の下にいっぱいの「かなしい」が増殖していく。
針を刺したら、きっと家中「かなしい」が広がって、外と同じ冷たい涙で家中ぐっしょりと濡れてしまうだろう。

薄墨で香典袋に名前を書きながら、和紙に染みぶちて行く自分の名前が、今の自分の姿そのままでハッとする。

例年になく、秋雨が辛い。
明日は、人差し指がなくとも笑えるのだろうか。

門間
[PR]
by 1193ru | 2005-10-16 00:39 | ヒト