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by 1193ru
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振り返らずに殴り書き~スウェーデンつれづれ旅行記(2)

○月○○日(△)夜ウメオ着
トランジットを重ね、夜、ウメオに到着。
ここまでが本当に長かった!
コペンハーゲンで途中下車(下機?)したかったし、ストックホルムで夕日を見ながら延々とビールを飲んでいただかった…
でも、とうとうやって来ましたウメオ!
真っ暗でわからないけど、来ましたよ~。お待たせ~!(…って誰に?)

が!

予約をしていたタクシーが見当たらず、異国の(しかも田舎で人影がほとんどない)夜の空港で不安がよぎる。
アテンダント役のMさんが慌てたものの大御所御三方は動じず。「動かざること山のごとし」ってこのことか?!さすがだ!

そこへ颯爽と現れたのがスーパーウーマンの犯罪被害者庁のお二人。そう言えばトランジットの度にお茶してここまで来たんだっけ!
手際よくタクシーを手配して、私たち5人をホテルへエスコートしてくれたのでした~♪
ありがたや~。

ホテル着後すぐにミーティング。明日からの視察スケジュールの確認後、就寝。
振り返らずに殴り書き~スウェーデンつれづれ旅行記(2)_c0020127_219535.jpg

○月○○日(△)ウメオ―犯罪被害者庁→ストックホルム
朝、ホテルで通訳のMr.Tと初顔合わせ。
大学卒業後、こちらへ留学しそのまま永住とのこと。
聞けば日本政府のおエラいさんたちの通訳を数々こなしているそうな。
エコノミストとのことで、今回のDVや性暴力は専門外とのこと。でもここはプロ。Mr.Tは、どれだけ勉強してきたかをプリントアウトしたペーパー束をかざしてアピールし、私たちの信頼を得ようと必死だ。
でも私たちはただの日本のオバちゃんではなく、フェミオバなのよ。しかもスーパー級の…。
大丈夫かMr.T?
私の心配をよそに早くもMr.Tは地雷を踏む。
「いやぁ~、我が家では妻の方が強くてね。私の方がDVを受けています(笑顔)」。

チャイニーズレストランでランチミーティング。
犯罪被害者庁では、国としてどのような政策の下どのように被害者・加害者・関係機関や下部組織とやり取りしているのか、また組織体制はどのようになっているのかを押さえる予定。
首都ストックホルムから離れることウン百キロ。こんな小さな片田舎に首都機能があるなんて正直どうなっているのと思っちゃう。日本でいえば、検察庁が東北の片田舎にでもあるようなイメージだろうか…

犯罪被害者庁は、自前のビルではなく貸しビルの中のいくつかのフロアを借りている。霞が関のビル街とは大違い。かなり年季の入った古いビルをリフォームして使っている。
スタッフ一人ひとりに6畳程度の部屋があり、それぞれ使う人のセンスに合わせてカーテンやデスク、その他諸々がコーディネートされている。
ドアはオープン。ドアが閉まっている部屋はない。
入口には部屋の主のポートレートがハリウッドスターばりに飾られている。海外のオフィスの美しさにはいつも驚いてしまう。ホント、霞が関とは大違いなのだ。ここは北欧。こんなにもオフィスが明るく美しいなんて、まいっちゃうな。これじゃ制度や支援が進んでても当たり前と思ってしまう。環境の違いは発想の違い。生きる姿勢の違いにつながる。
記録係の私はこれでもかとシャッターを切りまくる。

インタビューを受けてくださったのは二人の女性。ここ犯罪被害者庁の職員60人全員が法律の専門家とのこと。日本で言えば全員司法試験合格者というところか。その60人のうち70%が女性とのこと。しかも若い!驚く程の若さと美貌!もちろん、キャリアを積んだ美しい50歳代の方もいる。
ついついスタッフの若さについて質問すると「ここは人材養成機関でもあるの。ここで何年か働いた後、そのノウハウや知識・人脈を持ってNGOや他の機関へ転職する人が多いのよ」とのこと。
アメリカやイギリスと同じだ!官民の組織の中で行ったり来たりをしながらキャリアを積み事を成して行く。人が動けばそれだけネットワークがスムーズに広がって行く。

ここウメオには、ウメオ大学がある。同大学の中でも法学研究の成果はすばらしく、その歴史・業績も並々ならぬものがあるという。中央官庁の機能をスウェーデン各地へ分散した際に、犯罪被害者庁はウメオに移された。それからウメオ大学からストレートに犯罪被害者庁へ入る若者が増えたという。
ちなみに視察中、男性職員には1人にしか会わなかった。

さて、話を戻そう。ここ犯罪被害者庁には3つの大きな機能がある。1つは犯罪被害者損害基金の運営。2つは犯罪被害者支援基金の運営。最後が情報センターである。

犯罪被害者基金は、犯罪被害法に基づいて犯罪被害者に対して犯罪被害者補償金が支払われる制度。
スウェーデンでは、犯罪に遭うとその損害を①裁判所の決定で加害者へ請求②保険会社からの支払い(ただし、自宅内の暴力には保険適用不可)③犯罪被害者庁からの補償―の3つの方法で支払われる。
これは、すべての犯罪被害者に対しての対応となる。
加害者不明のレイプや殺人等も相手がわからなくても補償の対象になる。
加害者が有罪になることが支払条件ではないところがすごいところだが、もちろん、補償申請は2人の法律家によって慎重に審査・判断されるのでどのケースでも通るというわけではない。
しかし、補償は、物的損害と人的損害に分けられ、人的損害に対しては支払制限はなく誰がどんな犯罪に遭ったかを問わずストレートに被害程度に対して補償がなされる。治療費や欠勤補償についても対応がされる。補償金額は、さまざまな状況によって決定される。
例えば、殴打は6万5千円。物を使って殴ると20万円。深刻なDVは40~80万円。強姦は100万円。子どもに対する性暴力は200万円以上、身内が殺害された場合は65万円程度と、暴力の内容によって補償額がほぼ明確にわかる。
これを日本のDV被害者が知ったらすぐに自分の被害を計算するのではないだろうか。ぜひして欲しい。
こんな明確なラインが提示されていたら、「私のされたことはたいしたことはないから」という過小評価も少なくなるのではないか、DVの呪縛から解き放たれ自分の尊厳を求める人が増えるのではないかとつい思ってしまう。
また、このことを子どもの頃から教育として知ることができれば暴力の抑止力になるのではないだろうか。
法律や制度は明確で分かりやすく誰にでも使えるものでなくてはならない。
スウェーデンの法律や制度がどれもパーフェクトに手放しで素晴らしいとは言わないが、このような明確さを我が国の法律・制度も持たなくてはならないのではないだろうか。

2つ目の犯罪被害者支援基金とは、暴力被害者支援を行っている団体への支援だ。これを国の仕事としてやっていること、それからこの基金の財源が加害者から徴収した罰金であるというからこれまたすばらしい。
「犯罪被害の補償金は、加害者が支払う」「加害者がみずからその責任を負う」というのがスウェーデン方式。
実にシンプルで当たり前だ。
国は、罰金の徴収を行い、徴収したものはしっかり被害者とそのサポーターへ還元する。
あらゆる犯罪の加害者は、加害行為が認められると500スウェーデンクローネ(SEK)を支払わなくてはならない。
日本円にして約6500円。
決して高くはない額だが、あらゆる犯罪の加害者がまずは一律この額を支払うというのは画期的だろう。この額年間3000~4000SEK(日本円で約4~5億円)とのこと。すごい額だ。
この基金の申請は、女性支援センターをはじめとする支援事業をしている自治体、大学等の研究者、支援活動をしている民間団体・グループ・個人ができる。
だいたい年間5億弱程のお金が提供されているという。
大学院レベルの論文に対しても懸賞金としてこの基金が活用されているとの話も聞いた。
一連のお金の流れ・使い道の明確さは、当たり前過ぎるほどわかりやすくシンプルだ。
そして、筋が通って美しさすら感じる。素人の私ですら、この法律や制度に美を感じてしまう。なのに他のどの国でも行っていない。我が国の専門家はどうかしているのではないだろうか。

3つ目は、情報活動センター機能。犯罪被害に関する書籍や論文が集められている。
英語、スウェーデン語のものはもちろんのこと、ヨーロッパ・アメリカ圏を中心に集められているまた、北欧圏のものだとチラシの類まで集められているという。
これらの資料・情報収集だけではなく、情報活動センターでは、出版やウェブによる情報発信も積極的に行っている。特に目を引いたのは、「裁判所学校」というHPのコーナーだ。実際の裁判所の映像を基に作られた法廷に、裁判官、被害者、加害者、弁護士、日本でいう裁判員がおり、それぞれの立場や役割を音声説明してくれる。このコーナーは現在、スウェーデン語と英語で聞くことができる。世界中の人が、スウェーデンの先進的な取り組みをインターネットで触れることができるのだ。
インターネットにアクセスできない人用には、DVDやパンフレットも用意されている。
また、情報活動センターでは、教育の一環として学生向けの教材や資料の開発も行い販売もしている。これらの教材は主に学校で、社会化教育や人権教育等に活用されている。
これら3つが犯罪被害者庁の大きな柱である。
ほかにも、警察官や弁護士、支援者への研修や暴力被害者に対する研修を担当する職員や、国内の裁判者すべてに配置されている証人サポーターへの教育をする職員もおり、犯罪被害者庁は教育機能も保持しているとのこと。徹底したハイレベルな教育を受けることで、被害者の二次被害を防ぐこと、よりより支援ができることをよくわかっているのだろう。
講演や相談対応先で、「いつも」と言っていい程、警察官や裁判官、弁護士や相談員、医師や人権擁護委員、カウンセラーのごく一部の人たちからの二次被害の相談を受ける。日本にはまだこうした担当機関への教育が制度化されていない。どこの機関も苦しい予算の中でやりくりをして「今年は研修ができた」「今年は研修ができなかった」というレベルなのだ。それでは二次被害をなくすことなどまだまだ遠いのではないだろうか。
犯罪被害者庁の話は尽きないが、まずはここまででも見習うべき、取り入れるべきポイントが山のようにあると思うのは私だけではないのでは?

夕方、ウメオからストックホルムへ。
Mr.Tも一緒だ。朝と打って変わって私たちを「日本のオバちゃん集団」とはもう思っていなさそう。
ごめんね、Mr.T。私はともかく、御三方は日本を代表するDV・性暴力被害者支援の専門家なんですよ。驚いた?驚くよね。だって見た目で人を判断しちゃうんでしょ。そういう人は驚くよね(笑)


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ウメオは風が強くて、それでも国内線は頑張って飛ぶ。
小さな国内線は、ちょっと怖い。夕べもちょっと怖かった。
でも、健気に頑張る翼を見ているのも結構好きだったりもして。

ウメオ空港…小さくて小ぢんまりしていて私好みだった。ローカルだけど、スウエェーデン語、英語、フランス語そして我々日本語が飛び交っている。小さいけど、広いところに繋がっているそんな雰囲気のある空港。私の幻想かもしれないけど。

ウメオは、昔、滞在していたロンドンの下町を思わせる街並み。高い建物がないところ。すごく安心できる。住むにはきっといいところなんじゃないかな。
ウメオ…PC入力したら「梅雄」に。
あぁ、こんなにも女性が活躍している街なのに「梅雄」なんて!
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by 1193ru | 2010-01-02 20:41 | スウェーデンDV